不動産の有効活用を考える 第2話 現状分析 戦略を考えるには「敵を知り己を知らば百戦危うからず」

第2話 現状分析 戦略を考えるには「敵を知り己を知らば百戦危うからず」なので

解決すべき問題は、「納税資金としての銀行借入の返済」と山田社長と合意いたしました。そこで、考えられる問題解決の手法を考えた上、最善の策を選択することことといたしました。

いわゆるフィージビリティスタディ(FS)になります。私はこのFSにおいて現状の条件下での検討と、もう一つは現状の条件のうち変更可能なことがあれば変更することを前提に検討をしました。

現状のFSにおいては、二つの検討を行いました。

①    現場の敷地の制限下で建築可能な建物を建築した場合の収支の検討

②    現状の敷地形状で借入金を返済するために売却必要面積の検討

次に、前提条件を返納するFSは敷地が山手通りに接道した場合どの程度の面積を売却すればいいのかを検討しました。

偶然山田社長の敷地と山手通りとの間に3軒の家がありました。もし、そのうちの1軒でも山田社長が取得できると敷地は山手通りに面した敷地になるので、高層の建築物を建てることが可能になります。そこで、山手通りとの間の3軒の家のうち1軒を取得した場合の資金収支のFSを検討することといたしました。

渋谷区は名前の通り山あり谷ありの形状の町です。山田社長の敷地は500坪もあるため、当然高低差のある形状でした。この高低差は、不動産の建築では制約条件になります。

通常は敷地に建物を建てる場合には、建築確認というものを取得すれば建物ができます。しかし、敷地に高低差がある場合には建築確認以外に宅地造成法(宅造法)の規制がかかる場合と都市計画法(都計法)の規制がかかる場合があります。

この二つの規制の目安は敷地内に2mの高低差がある場合には、宅造法や都計法の規制がかかる可能性があると考えます。山田社長の敷地もやはり行政に相談したら宅造法の規制はかからと言われました。そのため、建築物に関しては既存の建物敷地に合わせての建築以外では宅造法の規制がかかるので隣地との取り合いが問題になるとの指摘がありました。

既存の建物は戸建てのためかなり制限のある建築物の計画になりましたので、収支はそんなに良いものになりませんでした。

次に現状の敷地の売却での価格を検討しました。現実的に容積率400%あっても接道が狭いため容積率を完全に消化して高層建築物を建てることができないため、土地の単価としては商業地としてのものでなく、住宅地のものとなります。そのため、敷地の8割近くを売却する必要になりました。

最後は隣地を購入できた場合のFSを検討しました。この場合に敷地が山手通りに面することになりますので、容積率を100%消化した建築物の建築が可能になります。そのため、土地単価は商業地の単価になるため約4倍になります。その結果、売却面積は大幅に減少でき、40%程度の売却で済むとの結論が出ました。

以上の3つのFSを山田社長に説明しました。ある程度は想像していたのが、現実の建て替えの収支は想像していたが、ここまで酷いとは想像していなかったのでショックを受けておられました。

現実には、当然ブレ幅はあるにしても2割程度変化しても全く収支として魅力のあるものではありませんでした。加えて、単純売却の収支も想像以上に厳しく現状で条件下では問題の解決ができないのが確認されることになりました。

山田社長からすると「どうすればいいの?」ということになりました。そこで、提案したのが隣地を買収して容積率が400%の部分だけを売却する方法を提案しました。提案内容に関して直ちに理解はしたのですが、当然、課題があることも理解していました。なので、山田社長からしたら「このアイディアはいいけど絵に描いた餅じゃないの?」という当然の話になりました。