デザインを考えるときには常識は排除する。

井戸があるために点検口が必要になる

注文住宅は建築基準法の制約や敷地形状の制約などはありますが、やろうと思えば理想の家を建てることはある程度可能です。これが中古住宅のリノベーションになると制約が結構多いので理想の家が実現できる保証はありません。特に戸建てとなると構造の問題など制約が多く大変です。

そんな戸建てのリノベーションを考えているブロガーさんの話は感動ものでした。予算的な制約と家に対する思い入れから建て替えでなくリノベーションを選んだそうです。

 

色々な制約があるの中で感動したのが建物の中に井戸があるということ。井戸が建物内にあるとは不動産業30年を超える経験の中で初めて聞きました。敷地内の井戸に関しても潰すには大変で、儀式に加えて空気抜きなどの処理などが必要です。そんな大変な井戸が建物中にあるというのは大変なことになります。

井戸に対する感謝の気持ちがあるので、「潰して埋めないで井戸のまま残したい」とのブロガーさんたちの希望だったそうです。井戸の上には床を貼ることにしたそうです。しかし、設計者は法的な問題とそれに伴う管理の問題から、床に点検孔が必要になると指摘してきたそうです。

ブロガーさんは、杉の無垢のフローリングにしたいので点検孔をフローリングにつけることを検討したそうです。しかし、設計者からの提案は、市販のアルミ製フレームの点検口をつけるものでした。とってつけたような点検口ですので、ブロガーさんは納得できずに床の仕上げをその部分だけ変えることになったそうです。

ブロガーさんはかなり嘆いてました。

プロに頼むと既製品を紹介する

井戸を大切にする思いは素晴らしいものだろ思います。その思いを大切にしてやはりリノベーションを考えるのがプロの仕事だとは思いますが。

杉の無垢のフローリングにアルミの点検口はありえません。多分設計者もあり得ないと考えて仕上げを変える提案をその後でしています。しかし、この提案が正しいのかといえば間違いと言わざるを得ません。

本来点検口は、別に常時開放できることが必要なのではなく、何かメンテで必要なときに開けられれば良いだけです。

開けるために必要な仕組みを組み込めば良いだけです。例えば、井戸の上の部分のフローリングをビス留めにして、点検が必要なときにはそのビスを外せば井戸の点検ができるようにすれば良いだけです。

ただ、フローリングを外すためにはフローリングだけでなく、下地の処理の問題があるために施工は大変になりますが、できないことではありません。

しかし、設計者は慣れた方法で考えるがちです。そのため、「床に点検口」と言われると条件反射的に「市販の点検口」を提案したのだと思います。困ったものです。思い込みに近い条件反射に基づく提案は「理想のリノベーション」の実現の妨げになります。
サブウェータイル の使い方

私たちはキッチンのタイルにサブウェータイル を使っています。名前から想像できるように地下鉄で使われているものです。ニューヨークの地下鉄で使われているものです。大型の真っ白なタイルは大きさの割には存在感がなくいい感じになります。

 

ニューヨーク出身のデザイナーはこのサブウェータイル をキッチンに使うのが信じられないといいます。理由は、サブウェータイル は地下鉄の駅舎の中でどこでも使われていて、トイレでも使われているからだそうです。そんなトイレで使っているものをキッチンで使うのは信じられないという考えです。

しかし、デザイン性がありトイレで使われていたものを剥がして使うのであれば問題ですが、同じ製品を使うのであれば問題ないと思います。やはり、ニューヨーク出身のデザイナーの思い込みがせっかくいいデザインの商品を使えないことになっているのだと思います。

機能からデザインを考えるべし

やはり、思い込みからデザインを始めると理想のリノベーションの実現は難しくなります。まずは、「リノベーションの目的」を明確にして「譲れないもの」を明確にしておくことが大切です。

この「譲れないもの」が明確にされているかぎはブロガーさんのように基本的なデザインの変更までの話には進まなかったはずです。設計者を含めて関係者が知恵を出し合って「譲れないもの」の実現を目指しそして実現しようとしたはずですので。

私たちはそんな皆様の「譲れないもの」に関して実現できるためのちを出すのが仕事だと考えています。

私たちは「目的」を決めるところから「リノベーション」のプランを考えます。