不動産の有効活用を考える 第5話 敷地の複雑な権利関係はどうするの?

図は、今回の土地の権利関係を簡略化したものです。実はもっと複雑に分筆しているのですが、話をわかりやすくするために単純化してあります。

①と③の部分が商業地域になるため高層の建物を建築が可能になります。②と④の部分は第1種住宅専用地域のため2階建ての建物しか建てることはできません。

今回最も効率的な売却方法は、

土地の用途地域から①、③そして⑤の土地を売却することになります。①は現状法人名義のため単純に売却すると50%近い税金がかかることになります。

③の価格を低くして売却してする方法がかんがえられます。

具体的には、①、③と⑤の土地の価格をバラバラにして売却する方法です。

①の土地を単体で売却すると建物を建てることはできませんので実質無価値になります。しかし、一体で売却することで①の土地にも価格をつけることが可能になります。この価値上昇分のうち一部は⑤の土地の寄与であると考えることが可能なため、価格差をつけるという手法が考えられます。

極めて複雑な手法ですが不動産鑑定では寄与度という概念で鑑定評価上有効な理論となっています。しかし、この考えを採用すると①の土地の評価を下げることは可能ですが、①の土地の評価を下げた分を⑤の土地の評価に載せることになります。結果⑤の利益が増えることになります。

⑤の土地の利益が増えることには問題があります。この利益は短期扱いになりますので税率は高くなります。当時は短期利益に対して50%近い税金がかかることになっていました。そのため、価格差をつけて売却しても結果的には同じ50%という高い税率になるので問題の解決にはなりませんでした。

残された方法は、①の土地と②の土地を交換して①の土地の名義を山田社長の名義にし、②の土地の名義を法人名義にし、名義変更後個人名で①、③そして⑤の土地を売却する方法です。

不動産の交換は、長期保有の不動産は等価での交換であれば非課税になります。―正しくは課税の繰延ということになりますが。交換後一方の相手が売却しても交換契約は非課税になる制度が認められています。―ちなみにこの手法は「片割れ交換」と呼ばれています。

交換後の売却の税務上は複雑な構成になっています。①の土地は交換後直ちに売却するので短期保有になります。③の土地は長期保有なので特段課税上の問題は有りません。⑤の土地は短期保有の売却になります。

短期保有は、前述のように税率が高くなるので避けたいことになります。片割れ交換で取得した土地に関しての譲渡に関しては特例が認められています。それは交換後直ちに売却した場合には、交換は有効に成立していて相手がは非課税になります。

交換後売却した方は、交換がなかったことになります。そのため、売却したのは交換前の土地と認定します。これは、所有期間及び原価は交換前の土地の所有期間と原価を引き継ぐという考えです。

片割れ交換を行うことで、①の土地に関しては長期保有での税率が適用されることになるので税金の問題から解放されることになります。そこで、今回は片割れ交換後の売却という手法を選択することになりました。

しかし、ここで大きな問題が出てきました。それは、オーナーと会社の取引に関しては、「同族会社行為計算の否認」という原則が出てくるので土地の等価交換はできないのではないかという根本的な壁が目の前に出てきました。