不動産の有効活用を考える 第4話 隣地を購入すると言っても

測量から数日後山田社長から私宛に電話がありました。声はウキウキした感じで、「倉元くん、お隣さんから電話がった」と。内容は「山田さんが建物を建てるのであれば陽当たりも無くなるので売却したい」との話だったとのことでした。

隣地の方が売っていただけるのであれば、山田社長の目的の実現のための大きな一歩を踏み出したことになります。しかし、プロジェクトが始まるということは問題も発生することになります。

一つは、購入価格はどうするのか?もう一つは、購入資金をどうするかでした。まずは価格に関してはこちらから提案する方法もありますが、ディールを壊してはならないので、基本的に隣地の方の主導で行うのが基本になります。

そのため、山田社長に「お隣さんに価格は提示してもらってください。多分、お隣さんは価格の目処はないとは思いますが、一旦は要望を確認しましょう。お隣さんが価格の目処がないのでと言われた時には一旦持って帰りましょう。その上で考えましょう」と交渉に関してアドバイスしました。

山田社長が、実際にお隣さんとお会いになったら想像通り価格の目処はないとの話でした。そこで提案したのが「基本的に不動産仲介業者三社に査定を依頼してくださいと話して、出てきた数字で判断し公正な価格を求めることにしましょう。」とでした。山田社長も納得して再度お隣さんとお話をされました。

仲介業者の3社のうち1社は山田社長の推薦にしてくださいと付け足しておきました。1社山田社長の推薦会社が入ることでお隣さんも自分に都合のいい数字にすることはできないので、可能な限り公正な価格を求めることが可能になります。

実は、最初から仲介業者3社への査定をする手法に関しては考えていました。しかし、その手法を最初に山田社長に話をしたら、準備したように話をする可能性がありました。素人の方は、普通演技はできません。

素人の山田社長が素早く対策を提案すると、お隣さんからしたら「騙されているのでは?」と疑問を持つ可能性があります。こんな疑念を持たれると話は壊れます。そこで、お隣さんが少しでも疑問感じないようにするため、山田社長には仲介業者を使う戦術の話をしないことにしていました。

山田社長がお隣さんに仲介業者による査定案を提案したら納得していただき出てきた価格をベースに売買をすることになりました。このことで価格に関する問題は解決しました。

価格の問題が解決すると、2番目の問題である購入資金はどうするかの問題の解決が必要になりました。このことに関しては、銀行からの借入になるのですが、購入名義を誰にするかという問題が発生します。

今回売却予定の名義人は山田社長と法人の二つの名義になっていました。そのため、山田社長名義か法人名義か、どちらにするかを決める必要がありました。この時点での税制では個人名義での売却が有利なため、購入は個人名義することになりました。

そうなると、銀行での借入の理由をどうするのかが必要になってきます。単純に購入して売却するための資金であれば不動産の地上げ資金になるため貸し出しがし難い環境にありました。そのため、隣地を購入して不動産賃貸事業を行うための資金が必要ということで借入をすることにしました。

当時は、まだ銀行不動産向け貸付に関して厳しくなかったために融資は実行されました。多分、今の規制の中では、単純売却を前提とした購入資金でれば実行されない可能性は高いと思われます。