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不動産の有効活用を考える 第7話 こんなリスクのある契約をいきなり結ぶの? 

第7話 こんなリスクのある契約をいきなり結ぶの?

以上の考えのもとまとまったのは以下の事項です。

①交換する不動産の価格は明示しない。(このおかげで印紙税で20万円得した)

②交換面積は税務当局が否定した場合には変更する。

③交換後個人名義になった土地は、マンション用地として売却する。

この内容をいきなり契約して申告するのではリスクがあるので、事前に所轄税務署に相談に行きました。税務署で税理士立ち合いのもと税務署の資産税課税部門の担当者に説明をしました。

当時はまだパワポのない時代でしたので、手書きの資料をもとに説明をいたしました。職員は説明を聞いているうちに「法律の穴」というか「法律正しい解釈」であることに関心し、「税法は基本的に民法の考え方に基づき作られています。上位方である民法の考え方に基づいているので税務署としては申告されたら契約書通りの解釈をすることになります」と言ってくれた。

東京国税局への相談事項は「税務当局の条文解釈」に繋がるために判断をしません。今回の質問は、民法の解釈に基づき税法を解釈した契約で、税務当局に「条文解釈」を求めるものでないため受け付けざるを得なかったのです。

この税務署の確認がとることができたので、ここで初めて購入者を探すことになりました。山手通り沿いの土地ですので、マンション用地になりますのですぐに買い手は見つかりました。

仕組みを作るのも大変でしたが、契約書の作成も結構大変でした。仕組みが複雑なため、買主さんも社内的に説明が必要なため、何度も仕組みの安全性の説明の資料を作りました。今でも残しておけばよかったのですが、現在手元にはありません。

山田社長は、税額で3億近い節税ができ、長年抱えていた悩みも解決でき喜んでいただけました。

不動産の有効活用を考える 第6話 等価交換の本質を考えてみる  子供頃を思い出してごらん

第6話 等価交換の本質を考えてみる  子供頃を思い出してごらん

税法の考えで、「同族会社計算行為の否認」という概念があります。これは、会社とオーナー社長の間では、合理的な経済行為とはいえない取引がなされるという考えです。例えば、会社からオーナーへ利益移転する場合には、安く資産を移管する。逆に会社の利益を消すために社長に高く資産を移管することもあり得ます。

税務の実務では会社とオーナー社長との間の取引は神経質になります。実は、この概念は憲法違反と言われています。課税法定主義が憲法上の課税に関する規定です。しかし、「同族会社行為計算の否認」というものは、裁量的な課税になります。そのため、憲法違反との指摘はなされていて、現実に2011年2月に最高裁で裁量的な課税に関して否定して国税敗訴の判決が出ています。(武富士事件)

基本的に憲法上の問題を抱えているのが「同族会社行為計算の否認」ですので、交換に関して合理的な考えがあると私は考えました。そこで考えたのが「交換」の本質は何かについてでした。

話は変わるのですが、あるとき資産の評価の話を取引先の方とした時のお話をします。そこで話なったのが、お客様から問われたのは「その資産の価値ってどんなものなの?」という質問がりました。そこで、「単価かから考えるとこのぐらいの金額ですかね?」と答えました。すると「倉元さん、それは価格であって私が聞いているのは勝ちなの」と再度質問されました。

何か狐につままれた感じがしたのですが、その後冷静になってみると、英語で考えるとわかりやすくなることに気がつきました。日本語だと「価値」と「価格」は似た感じがします。しかし、英語だと「価値」は”Value”で「価格」は”Price”となります。そうなんです、「価値」と「価格」全く異なったものになります。

そこで、違いがあると理解でき、再度考え直してみました。すると、「価値」は主観的なものであって、「価格」は客観的なものだと考えるに至りました。そして、「価値」は主観的なものになるので、第三者には理解できないことになります。

このような「価値」に関する定義をもとに「等価交換」の本質を考えてみました。「等価交換」はお互いの「価格」が同じだから交換するのではなく、「価値」が同じだから交換すると考え方が合理的ではないでしょうか?

そこで、子供の頃の遊びを思い出したのです。私の子供頃は「野球のカード」と「仮面ライダーのカード」が流行っていました。野球で言うと王長嶋のカードを持っているとみんな羨ましがっていて、誰もが欲しいカードでした。

それ以外の選手に関しては、それぞれの人の好き嫌いで人気はバラバラでした。そうなると、カードの交換が始まります。自分の好きな黒江選手のカードを持っている友達がいたら、手持ちのカードを全部見せて交換に応じてくれるまでカードを提供していました。

この時の交換する時には「価格」は関係なく「価値」で交換しているのではないでしょうか?野球のカードと同じようにプロ野球の交換トレードも、選手の年俸がいくらだから、同じ年俸の選手と交換トレードを行うことはないといえます。あくまでも補強に必要な選手を得るために、交換に出して良い選手のリストから相手方は選手をピックアップするのではないでしょうか?

この「価値」による交換を行うと考えると仕組みを考えることができるようになります。しかし、こちらは「価値」で交換したと主張しても税務当局が「価格」で交換したと主張すると交換が否定される可能性があります。次に考えないといけないのは、この「価格」を否定する理論を考えることになりました。

不動産の有効活用を考える 第5話 敷地の複雑な権利関係はどうするの?

図は、今回の土地の権利関係を簡略化したものです。実はもっと複雑に分筆しているのですが、話をわかりやすくするために単純化してあります。

①と③の部分が商業地域になるため高層の建物を建築が可能になります。②と④の部分は第1種住宅専用地域のため2階建ての建物しか建てることはできません。

今回最も効率的な売却方法は、

土地の用途地域から①、③そして⑤の土地を売却することになります。①は現状法人名義のため単純に売却すると50%近い税金がかかることになります。

③の価格を低くして売却してする方法がかんがえられます。

具体的には、①、③と⑤の土地の価格をバラバラにして売却する方法です。

①の土地を単体で売却すると建物を建てることはできませんので実質無価値になります。しかし、一体で売却することで①の土地にも価格をつけることが可能になります。この価値上昇分のうち一部は⑤の土地の寄与であると考えることが可能なため、価格差をつけるという手法が考えられます。

極めて複雑な手法ですが不動産鑑定では寄与度という概念で鑑定評価上有効な理論となっています。しかし、この考えを採用すると①の土地の評価を下げることは可能ですが、①の土地の評価を下げた分を⑤の土地の評価に載せることになります。結果⑤の利益が増えることになります。

⑤の土地の利益が増えることには問題があります。この利益は短期扱いになりますので税率は高くなります。当時は短期利益に対して50%近い税金がかかることになっていました。そのため、価格差をつけて売却しても結果的には同じ50%という高い税率になるので問題の解決にはなりませんでした。

残された方法は、①の土地と②の土地を交換して①の土地の名義を山田社長の名義にし、②の土地の名義を法人名義にし、名義変更後個人名で①、③そして⑤の土地を売却する方法です。

不動産の交換は、長期保有の不動産は等価での交換であれば非課税になります。―正しくは課税の繰延ということになりますが。交換後一方の相手が売却しても交換契約は非課税になる制度が認められています。―ちなみにこの手法は「片割れ交換」と呼ばれています。

交換後の売却の税務上は複雑な構成になっています。①の土地は交換後直ちに売却するので短期保有になります。③の土地は長期保有なので特段課税上の問題は有りません。⑤の土地は短期保有の売却になります。

短期保有は、前述のように税率が高くなるので避けたいことになります。片割れ交換で取得した土地に関しての譲渡に関しては特例が認められています。それは交換後直ちに売却した場合には、交換は有効に成立していて相手がは非課税になります。

交換後売却した方は、交換がなかったことになります。そのため、売却したのは交換前の土地と認定します。これは、所有期間及び原価は交換前の土地の所有期間と原価を引き継ぐという考えです。

片割れ交換を行うことで、①の土地に関しては長期保有での税率が適用されることになるので税金の問題から解放されることになります。そこで、今回は片割れ交換後の売却という手法を選択することになりました。

しかし、ここで大きな問題が出てきました。それは、オーナーと会社の取引に関しては、「同族会社行為計算の否認」という原則が出てくるので土地の等価交換はできないのではないかという根本的な壁が目の前に出てきました。

不動産の有効活用を考える 第4話 隣地を購入すると言っても

測量から数日後山田社長から私宛に電話がありました。声はウキウキした感じで、「倉元くん、お隣さんから電話がった」と。内容は「山田さんが建物を建てるのであれば陽当たりも無くなるので売却したい」との話だったとのことでした。

隣地の方が売っていただけるのであれば、山田社長の目的の実現のための大きな一歩を踏み出したことになります。しかし、プロジェクトが始まるということは問題も発生することになります。

一つは、購入価格はどうするのか?もう一つは、購入資金をどうするかでした。まずは価格に関してはこちらから提案する方法もありますが、ディールを壊してはならないので、基本的に隣地の方の主導で行うのが基本になります。

そのため、山田社長に「お隣さんに価格は提示してもらってください。多分、お隣さんは価格の目処はないとは思いますが、一旦は要望を確認しましょう。お隣さんが価格の目処がないのでと言われた時には一旦持って帰りましょう。その上で考えましょう」と交渉に関してアドバイスしました。

山田社長が、実際にお隣さんとお会いになったら想像通り価格の目処はないとの話でした。そこで提案したのが「基本的に不動産仲介業者三社に査定を依頼してくださいと話して、出てきた数字で判断し公正な価格を求めることにしましょう。」とでした。山田社長も納得して再度お隣さんとお話をされました。

仲介業者の3社のうち1社は山田社長の推薦にしてくださいと付け足しておきました。1社山田社長の推薦会社が入ることでお隣さんも自分に都合のいい数字にすることはできないので、可能な限り公正な価格を求めることが可能になります。

実は、最初から仲介業者3社への査定をする手法に関しては考えていました。しかし、その手法を最初に山田社長に話をしたら、準備したように話をする可能性がありました。素人の方は、普通演技はできません。

素人の山田社長が素早く対策を提案すると、お隣さんからしたら「騙されているのでは?」と疑問を持つ可能性があります。こんな疑念を持たれると話は壊れます。そこで、お隣さんが少しでも疑問感じないようにするため、山田社長には仲介業者を使う戦術の話をしないことにしていました。

山田社長がお隣さんに仲介業者による査定案を提案したら納得していただき出てきた価格をベースに売買をすることになりました。このことで価格に関する問題は解決しました。

価格の問題が解決すると、2番目の問題である購入資金はどうするかの問題の解決が必要になりました。このことに関しては、銀行からの借入になるのですが、購入名義を誰にするかという問題が発生します。

今回売却予定の名義人は山田社長と法人の二つの名義になっていました。そのため、山田社長名義か法人名義か、どちらにするかを決める必要がありました。この時点での税制では個人名義での売却が有利なため、購入は個人名義することになりました。

そうなると、銀行での借入の理由をどうするのかが必要になってきます。単純に購入して売却するための資金であれば不動産の地上げ資金になるため貸し出しがし難い環境にありました。そのため、隣地を購入して不動産賃貸事業を行うための資金が必要ということで借入をすることにしました。

当時は、まだ銀行不動産向け貸付に関して厳しくなかったために融資は実行されました。多分、今の規制の中では、単純売却を前提とした購入資金でれば実行されない可能性は高いと思われます。

不動産の有効利用を考える 第3話 売却前提条件の解決方法 実行不可能な解決策の提案はしてはいけな

第3話 売却前提条件の解決方法 実行不可能な解決策の提案はしてはいけない

山田社長は、現状では借入金の返済ができないことを認識したため、実現可能な解決策を実行することになりました。隣地に「お宅を売ってください」とはなかなか言い難いものです。普通に不動産屋が行くと「ふざけんな〜」と言われて終わりです。

では今回もダメと諦めるのかというと、山田社長の問題を解決するには隣地をどうしても購入することが必要になります。そこで、どうすれば隣地の購入ができるのかを考える必要がありました。

私は山田社長の敷地を測量することから話を始めることを提案しました。山田社長からすると「なんで測量をしないといけないの?」という疑問が当然生じました。測量する場合には勝手に敷地を測量することはできません。

境界は確定していない場合もありますので測量する場合には隣地の立ち合いが必要になります。この立ち合いの時に隣地の方の売却の可能性を確認する方法を説明しました。

通常測量する時には売却する時が基本なため、隣地の方に立ち合いをお願いすると必ず「なんで」と聞かれます。そこで立ち合いの依頼のところから測量士に対して「将来的な隣地の購入をするための測量だから、隣地の方に『何があるのか?』という疑問を持たせるように話すようにと伝えてから測量を始めました。測量士が隣地の方に立ち合いの依頼に行かせたときに測量の理由を聞かれたら「詳しく知らないのですが、活用か何かを考えられているみたいですよ」みたいな話をしてもらいました。

そして測量の立ち合い日になります。この日には私の部下を連れて仰々しい感じを演出しました。山田社長には「隣地の方は不安になるはずなので、必ず質問してくるのでその時には『有効活用を考えているので、もし何かご質問などあったらご連絡ください』と話してください」と説明しておきました。

山田社長は、隣地が購入できないと借入金を返済できないので、真剣に隣地の方に交渉することになります。現実に山田社長の隣地の方への対応は紳士的で隣地の方の信頼を構築するのに十分なものでした。

数日後、隣地の方から山田社長宛に連絡がありました。

不動産の有効活用を考える 第2話 現状分析 戦略を考えるには「敵を知り己を知らば百戦危うからず」

第2話 現状分析 戦略を考えるには「敵を知り己を知らば百戦危うからず」なので

解決すべき問題は、「納税資金としての銀行借入の返済」と山田社長と合意いたしました。そこで、考えられる問題解決の手法を考えた上、最善の策を選択することことといたしました。

いわゆるフィージビリティスタディ(FS)になります。私はこのFSにおいて現状の条件下での検討と、もう一つは現状の条件のうち変更可能なことがあれば変更することを前提に検討をしました。

現状のFSにおいては、二つの検討を行いました。

①    現場の敷地の制限下で建築可能な建物を建築した場合の収支の検討

②    現状の敷地形状で借入金を返済するために売却必要面積の検討

次に、前提条件を返納するFSは敷地が山手通りに接道した場合どの程度の面積を売却すればいいのかを検討しました。

偶然山田社長の敷地と山手通りとの間に3軒の家がありました。もし、そのうちの1軒でも山田社長が取得できると敷地は山手通りに面した敷地になるので、高層の建築物を建てることが可能になります。そこで、山手通りとの間の3軒の家のうち1軒を取得した場合の資金収支のFSを検討することといたしました。

渋谷区は名前の通り山あり谷ありの形状の町です。山田社長の敷地は500坪もあるため、当然高低差のある形状でした。この高低差は、不動産の建築では制約条件になります。

通常は敷地に建物を建てる場合には、建築確認というものを取得すれば建物ができます。しかし、敷地に高低差がある場合には建築確認以外に宅地造成法(宅造法)の規制がかかる場合と都市計画法(都計法)の規制がかかる場合があります。

この二つの規制の目安は敷地内に2mの高低差がある場合には、宅造法や都計法の規制がかかる可能性があると考えます。山田社長の敷地もやはり行政に相談したら宅造法の規制はかからと言われました。そのため、建築物に関しては既存の建物敷地に合わせての建築以外では宅造法の規制がかかるので隣地との取り合いが問題になるとの指摘がありました。

既存の建物は戸建てのためかなり制限のある建築物の計画になりましたので、収支はそんなに良いものになりませんでした。

次に現状の敷地の売却での価格を検討しました。現実的に容積率400%あっても接道が狭いため容積率を完全に消化して高層建築物を建てることができないため、土地の単価としては商業地としてのものでなく、住宅地のものとなります。そのため、敷地の8割近くを売却する必要になりました。

最後は隣地を購入できた場合のFSを検討しました。この場合に敷地が山手通りに面することになりますので、容積率を100%消化した建築物の建築が可能になります。そのため、土地単価は商業地の単価になるため約4倍になります。その結果、売却面積は大幅に減少でき、40%程度の売却で済むとの結論が出ました。

以上の3つのFSを山田社長に説明しました。ある程度は想像していたのが、現実の建て替えの収支は想像していたが、ここまで酷いとは想像していなかったのでショックを受けておられました。

現実には、当然ブレ幅はあるにしても2割程度変化しても全く収支として魅力のあるものではありませんでした。加えて、単純売却の収支も想像以上に厳しく現状で条件下では問題の解決ができないのが確認されることになりました。

山田社長からすると「どうすればいいの?」ということになりました。そこで、提案したのが隣地を買収して容積率が400%の部分だけを売却する方法を提案しました。提案内容に関して直ちに理解はしたのですが、当然、課題があることも理解していました。なので、山田社長からしたら「このアイディアはいいけど絵に描いた餅じゃないの?」という当然の話になりました。

不動産の有効活用を考える、お客様の話をきちんと聞いてないでしょう? その1

第1話 お客様は相談の本質を最初は語ってくれない

ある日、社内のインテリア販売部門の社員から相談の連絡がありました。内容は、インテリアコーディネイトをお願いしている会社の山田社長(仮称)が、所有している不動産の件で相談したので人を紹介して欲しいということでした。

山田社長にお会いして話をお伺いすると渋谷区の高級住宅地に500坪程度の不動産を保有しているとのこと。不動産の現状は、戸建ての高級賃貸住宅として貸しているけど、収益性が悪いのでなんらかの収益対策を取りたいということが相談内容でした。

そこで、現地調査をして考えをまとめることにしました。調査の結果は、敷地は山手通りから一本入った環境のいい場所で、山手通りから25mまでは商業地域で容積率は400%なので高層建築物の建築は可能でした。山手通りから25m以遠は第一種低層住宅地域で、原則的には2階建てまでしか建てることができないという立地でした。

敷地は山手通りに接していないため、容積率はそれになりにあっても高層の建築物を建てることできませんでした。そこで、既存の高級賃貸住宅がある意味最適な活用方法となっていました。活用方法には実質不可能であることを社長にはわかりやすく説明することが必要となりました。

今回の話を客観的に分析すると、現状3棟の賃貸住宅がありました。活用するとなるとテナントさんの「退去リスク」を負うことになります。個人にとって退去交渉はかなり面倒なのでやりたくないはずです。退去リスクを負ってまで活用したいということは本当の目的は別にあると考えるのが自然ではないでしょうか?

山田社長は名門大学を小学校から出ているような方なので、お会いしてお話をした時の印象から、活用には制限があり、活用するためにはテナントさんの退去リスクを負うことになるようなことを知らないとは考え難いとの印象を持っていました。そこで社長が相談したいことは別にあると判断しました。そこで、社長から本音を引き出すことで抱えている問題の解決策を考えるために大切なことだと考えました。

山田社長の本音を聞き出すためには、信頼を得ることが必要でした。そのため、社長の懐に飛び込み、「収益性の改善だけが目的なのか?」という本当の目的を引き出すような話の進め方をいたしました。一般論として、お客様は、本当の目的を話さず、直面している問題の解決策を人には相談するものです。なんで、お客様の言うことだけをベースに売却すると結果的にお客様の抱えている問題の解決にならなかったという例は多く見ていたのでこのような判断ができました。

山田社長の信頼を得るために考えたことは不動産の権利関係から創造される問題点の指摘をすることにいたしました。土地と建物の謄本から所有者を確認すると、社長の個人名と会社名の二つの登記が複雑に交錯されているのがわかりました。

所有権の名義の移動関係から判断すると、山田社長の父親からの相続の対策のために不動産の名義を複雑にしていることは想像できました。そして、抵当権の設定からは父親の相続税の納付を銀行借入で行っていることも想像できました。

山田社長との最初の打ち合わせの時に、経歴を聞いていたので社会人生活のほとんどをサンフランシスコとで過ごしていることを知っていました。法人名義と相続人がアメリカ在住者とすると当時の税制だと、日本の資産をアメリカ在住者に贈与すると非課税になる状態でした。

そこで、想像したのが

①    非相続人の不動産を複雑に分筆し資産価値を下げる。

②    一部の不動産を現物出資で法人名義にする。

③    法人の株式をアメリカ在住の相続に贈与する。

④    相続時には銀行借入で納税する。

このような、節税を行ったのでは想像しました。

山田社長との2回目の打ち合わせの時には、敷地調査の話はほどほどに登記関係から想像できる節税の話をしました。その上で、社長が解決したい問題は「納税資金の借入を返済」という結論に至った話をしました。

すると山田社長は「よくそこまで気がついたな、相談したい内容はそのことだ」といてくださりました。その上で、「三井不動産にも相談していたけど、そちらは断ることにするのでこれからよろしくお願いします」と言っていただきました。